焼岳(北峰) 2393m (中の湯バス停〜上高地)
2011年10月21日


霞沢岳から見る焼岳(2010年8月撮影)
中の湯〜上高地ルートは、
左側の下堀沢上部の右岸を登り、右側の峠沢中間部の左岸を下りる。


山のイラスト 針葉樹でありながら一斉に黄葉し落葉するカラマツという木には、北原白秋の詩を持ち出すまでもなく、日本人の心に訴えかける何かがあるように思う。毎年秋になると、落日の中金色に輝く数日を経て、繊細な葉をハラハラと落とすカラマツ林が、西中国山地の各地でも見られる。そして冷たい空気の中でその光景を目にし、落ちてくる葉の中に立つと、来たるべき冬の寒さを思って、もの寂しい思いになるのが常だ。そんなカラマツの黄葉で有名な上高地の秋を、一度訪ねてみたいと思っていた。有休をとった金曜日は天気が良さそうだったので、ついでに焼岳へ(やっぱり山)。

木曜日の夕方、16時に退社。速攻で家に帰り、玄関に準備してあったザックを持ち靴を履き替えて、急いで広島駅に移動。17時過ぎの新幹線に乗車。名古屋で最終の1本前の「しなの」に乗り換える。夜の中央西線を走るのは、夜行列車の「ちくま」がまだ走っていた頃以来だ。山を始めて間もなかったあの頃を思い出しながら、午後10時、松本に到着し、駅前のホテルに入った。


地図とコンパスのイラストデータ
行程

5:45中の湯バス停…6:30中の湯温泉…6:45焼岳登山口6:50…7:50休憩(1972m)7:55…8:15旧道出合(りんどう平)…9:15南峰/北峰鞍部9:20…9:25北峰/溶岩丘鞍部…9:30焼岳北峰山頂10:15…10:20北峰/溶岩丘鞍部(ドーム往復10分)11:10…11:52中尾峠…11:55展望ピーク12:15…12:20焼岳小屋12:30…13:50登山口…14:00穂高橋14:10…14:40河童橋…14:45上高地バスターミナル

コースタイム(歩行時間) 6時間40分
同行者 単独
その他 タクシー松本駅〜中の湯バス停 10,000円(深夜加算あり)


登山靴のイラスト 翌早朝、タクシーで中の湯バス停に向かう。本当は始発の松電に乗るつもりだったが、ちゃんと秋期の時刻表を準備していたにも関わらず、その中にも運行日指定の便があることを見落としていて、松本駅まで行ってそのことに気づく。ホテルに戻るのも面倒でタクシー乗り場へ。深夜加算ありのタクシー代は高くついたけれど、その分早く歩き出すことができる。

まだ日が昇らないうちに中の湯バス停に到着。登山届けを出して、座り込んでパンを食べていると、守衛さん?がやって来て、「焼岳に登るんなら、すぐそこの中の湯ルートの登山口は工事で入れないから、(安房)トンネルの手前を右に入ってね。11番カーブの手前だから」と教えてくれた。

そのときは深く考えず「はーい」と返事をしたものの、「11番カーブの手前」の登山口と言えば中の湯新道のものだと、歩き出してから気がついた。つまり、中の湯ルートを登ることで避けられると思っていた旧国道のとんでもないくねくね道を登っていかなくてはならない。(2.5万図が手元にある人は見てみてください。登山口に至るまでに10個ものヘアピンカーブがあるめんどくさい道なのがわかります。) 

明るくなり始めてから歩き出す。工事のトラガードで覆われた中の湯ルート登山口を恨めしく見て、安房トンネルの手前から旧国道に入る。1つのヘアピンカーブから次のヘアピンカーブまで、たっぷり5分間は歩かされるような道。「たいぎいなぁ」(広島弁)と愚痴りながらも、周囲の紅葉を愛でつつ、中の湯温泉を通り過ぎ、バス停から1時間もかかって中の湯新道の登山口(下の写真)に到着した。

これが登山口。ものすごく地味。車道脇に車を停められるスペースあり。そこからは・・・

釜トンネルをくぐっていないのに、もう穂高吊り尾根が見え、焼岳からの展望に期待がたかまる。

それにしても、中の湯ルートを登るつもりでいたので、こちらのルートは事前調査していない。しかも私の持っている地形図は古いので、中の湯新道が載っていない。ただ、登山口は10番カーブの先で谷を過ぎたところだったので、出発点はわかる。地形図をにらみつつ、歩き出した。

最初は歩いてきた方に戻るように、道路を右下に見る水平なトラバース道。やがて尾根を回り込み、右側に谷を渡ったところで道が登りになった。この時点で自分がどの尾根に乗るのかわかってひと安心。先読みができると疲労度が全然違うので、これはとても重要なことだ。

登り始めてからは、急な道が続く。

登山道はこの尾根に乗ったり外れたり。いったん傾斜が緩むが・・・、

ここからまた急な登りになる。

登りきったところが1972mのコブ。いったん少し下る(写真)。そして登り返していくと・・・

傾斜が緩み前方も明るくなってきた。この先の展望にワクワクo(^ ^)o

見えましたー!一気に気分が高揚。

左側が立ち入り禁止の南峰2455m。右側のピーク(のように見える尾根の先端)との間にわずかに見えているのが、これから目指す北峰2393m。

右手から中の湯ルートが合流(矢印)。この付近がりんどう平。
写真の左側へと進んでいく。

下堀沢右岸の登りとなる。これより上部の展望は最高!

昨年登った霞沢岳

振り返るとこんな眺め。

笹原の登り。見上げる先に、北峰の一部が噴煙を上げるのが見える。

見下ろせば、霞沢岳の山肌とカラマツ林の色彩。

さらに高度を上げて振り返ると、南峰から続く斜面の向こうに、乗鞍岳が見えるようになる。

南峰がとても近づいてきた。

そして南峰と北峰との鞍部に至ると、火口壁の向こうの笠ガ岳が視界に飛び込んでくる。

クレーター湖(正賀池)。

北峰の一部(右上の石灰色をした部分)からは、さかんに噴煙が上がっている。そのすぐ下をトラバースしていくと、北峰とその東側にある溶岩丘との鞍部に飛び出す。そこで視界いっぱいに広がる展望は・・・、




量感たっぷりに聳立する穂高連峰と、箱庭のような上高地。
上高地散策だけでなく山を組み合わせて良かったー。



鞍部にザックを置き、こんな岩場を登って北峰へ。5分もかからない。

すぐ近くの禍々しい色をした噴気孔から、絶え間なく噴気が上がる。硫黄とは少し違う匂いがする。

焼岳北峰山頂。360度の眺望はこちらのページで。

山頂は風が強くとても寒い。それでもあまりの眺めの良さに、40分以上もここにいた。

溶岩丘との鞍部に下り、上高地を見下ろしつつ至福のコーヒータイム。
東隣の溶岩丘(写真)に往復している人がいたので、私も行ってみた。鞍部から東側へ若干トラバースして、この尾根に乗る。地面は妙に柔らかく、空気はもわっとしている。触るとかなり暖かい。

上の写真の尾根から右下を見下ろす。こちら側にも小さな池があった。

溶岩丘から山頂を振り返る。左が南峰、右が北峰。

北峰はこんな感じ。あちこちから噴気が上がっているのがわかりますか?

鞍部に戻り、焼岳小屋へと下り始める。

見下ろすのはカラマツの黄葉に彩られる上高地。小屋を経て、あそこに下ります。

焼岳直下からの下り斜面は、ガレとザレがミックスした、とても滑りやすく危険な道。

慎重に下り、左手に尾根を回りこむと、こんな噴気畑の下を通る。

そして西穂へとつながる尾根に乗る。

下りきったところが(旧)中尾峠。

峠から登り返し、展望ピークから焼岳を振り返るとこんな感じ。いちばん高くドーム状に見えるのが北峰。左側が溶岩丘。

いま立っている展望ピーク自体も活火山の一部で、あちらこちらから湯気が上がり、近寄るともわっと温かい。

上の写真の噴気畑のひとつを拡大するとこんな様子。温泉に入りたくなります。





展望ピークから、真正面の霞沢岳と、真下の大正池&大正ホテル。



展望ピークから焼岳小屋へはひと下り。
振り返り見る展望ピークと焼岳。

小屋に到着。

小屋からは峠沢に向けてトラバースし、沢が近づいたところで下りとなる。

そして尾根を回りこむと、左側は岩壁となり、鎖のついた下りがあった。

続いてほぼ垂直のハシゴ。(マウスポインタを置くと下から見た図になります。) この後もハシゴ場が何度か現れる。

深い峠沢のすぐ側についた道はとても急な下り。これは4つ連続するハシゴの、たしか2つめ。

またまたハシゴ。

そして桟道。

どんどん下っていくと、やがて登山道は峠沢を離れ、傾斜も緩む。幾度か沢を渡り、気持ちのいい林を抜けていく。

焼岳登山口まで下りてきた。この後、未舗装の管理道をたどり穂高橋まで約10分。そしてそこからはもう観光客で賑わう上高地の一画。

今日は西糸屋泊まりだから急ぐ必要はない。ここからはペースを落として上高地散策モードへ。次ページへどうぞ!

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「岳」マウンテンクッキー 今年はやっぱりこのお土産!
「マウンテンクッキー」という響きにウケてしまいます。適当に作ったのかと思いきや、意外にもおいしかったですよ。長野県だけではなくて、伯耆大山の麓でも売っていました(←それはいくらなんでも・・・)。



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