向山 1065m 〜 蔵座山(最早山) 1064m (2) 積雪期縦走
三段峡〜向山〜蔵座山〜カナクラ峠〜深入山麓
2012年2月4日


1068m峰(内黒山とサバの頭の間のピーク)から見る向山
今日の登路は右側の長〜い尾根。
向山からは写真の奥へ縦走し、深入山側(左側)へ下山。

地図とコンパスのイラストデータ
行程 8:15三段峡駐車場…8:30西善寺…8:50 426.8mP 8:55…9:55導水管出合…10:30 731.7mP北西側鞍部…11:02尾根乗り換え(標高760m台右折地点)11:07…12:08林道出合…13:15向山山頂14:10…14:30蔵座山…15:25尾根分岐地点…15:35引き返す…15:50尾根分岐地点(標高950m)16:00…16:15カナクラ峠…16:40徒渉地点…17:00深入山南登山口道路入口
コースタイム
(実歩行時間)
7時間20分
(行動時間 8時間45分)
同行者 ぽち隊長、ユッキー、夫
その他 入浴@ひまわり 300円/1人


登山靴のイラスト 2年前に向山に登ったとき、山頂の南側になだらかに続く尾根の感じが素敵で、歩いてみたい気がした。ただ、実際に歩こうとは(そのときは)思わなかった。なぜならその尾根の末端は三段峡。取り付きから向山までの標高差は700m。まともな登山道はない。

こんな尾根を、厳冬期の2m近い積雪の中登ろうというのは、ふつうの人間ではない。『西中国山地』をベースにした山登りではこの人をおいて他にはいないKさんか、そのほかに考えられるのは・・・、
















ワンコだ。
















ども。






ワンコと言えば、ぽち隊長! 雪が降ると興奮して散歩に出たがり、飼い主のぽこちゃんを困らせるあのワンコ。欧州生活でパワーアップし、初めての槍ガ岳に北鎌尾根から登ったあのワンコ。

今日のルートの発案者はそのぽち隊長。標高差700mを登り、稜線を東へ、カナクラ峠か、運が良ければ犬ガ谷山まで縦走し、深入山麓に下山するという、まる1日深雪のラッセルに苦しめられるを楽しめるルート。並みの人間なら怖気づくか、計画そのものが理解できないこんなルートに魅力を感じ、ついつい参加すると返事してしまった私もどうかと思いますが。。。(大汗;;

今冬の深雪をついて700mを登るなら、ラッセル要員は多い方がいい。そこでもう一匹のワンコに散歩はどうかと誘惑してみた。雪上での機動力は観察ずみの子犬ユッキー。これで戦力は確保。登りの所要時間を5時間と予測し、三段峡駐車場を出発した。


三段峡駐車場から芝木川にかかる橋を渡ると、左手に西善寺がある。ここが今日の取り付き地点。ぽち隊長が偵察行で確認しておいた箇所。『西中国山地』にも、西善寺からとりつけると書いてある。

膝上までの深い雪。

最初に浅い谷をジグザグに登っていくと、南西の小尾根の上に、西善寺の歴代住職の墓所があった。そこから直接最初の鞍部を目指すはずが、コンパスを見ずに歩いているうちに、 R191を挟んだ山を目指す高みと勘違いしてしまい、426.8mピークに乗っていた。いきなり波乱含みの展開。

426.8mは緩いピークなので、思い込みで進んでいるととんでもない方向に行く可能性がある。やはりコンパスを信用すべきということになり、軌道修正。5分後、正しい鞍部に到着。

こちらがその鞍部(南側から見下ろしたところ)。作業小屋のようなものがあります。

鞍部からしばらくはなだらかな尾根。右側(東側)には、深入山や臥龍山に行くときに車で通るR191の谷筋の民家が見える

やがて急な登りになる。発電所の導水管に出会うまで北西へ、高い方へと進んでいけばいい。

導水管に出会った。ものすごい傾斜。下の方に、出発地点の芝木集落が見える。

導水管をくぐり・・・、

その横を登っていく。

導水管、続きます。矢印の地点に導水管の管理棟?のようなものが見え、あそこまで登るのかと、ちょっと気分が萎える(笑)。

しかし若いユッキーの弛まぬ高速ラッセルで、意外に楽にその管理棟の下に到着。

導水管、まだ続きます。731.7mピーク(写っていませんが写真右手)の下をトラバース。導水管も無駄な労力は使わないようで・・・(笑)。

737.1mピークの北西側鞍部にくると、導水管は谷を渡って向こうへと延びていた。(導水管はこの先で地中にもぐり、聖湖まで延びている。どうやって作ったんでしょうね・・・。)

写真の上に見える尾根が、この後で歩くところ。左側の尾根に乗らずできるだけ水平に鞍部を目指そうと進んだものの、倒木に阻まれ、結局左の斜面を登る。そしてトラバース気味に鞍部に到着。

鞍部から登り返すと、尾根を乗り換える地点に至る。そこから右に向きを変え、比較的傾斜の緩い尾根(写真)を登っていく。いい感じです。ただ雪はとても深く、スノーシューをはいていても膝までもぐる。

それではぽち隊長にラッセルのお手本を見せてもらいましょう。
腰の入った力強いこの姿勢。さすがです!

尾根を乗り換えてから約1時間。北東側から林道が延びてきている地点までやってきた。(おそらく標高900m付近。)この林道は蔵座山の東側を回ってここに来ているのだと思います。

この先、最後の急登。

導水管に出会ってからこの付近までのユッキーのラッセルは見事だった。あまりのスピードに、後ろでぽち隊長が「すげー、サイボーグかよ。オレ、もう引退しようかな・・・」とつぶやいているのが聞こえる。私も「もう子犬は卒業して『サイボーグ犬』と呼ぼうかな」と言っていたのですが・・・。

先ほどまでの勢いはどこへやら、この最後の急登にかかる頃から、ガクッと速度が落ち、全然進まなくなってきた。サイボーグ犬出現かと思っていたが、跳ね回ってエネルギーを使い果たしてしまう様子はまるで・・・、











サイボーグ子犬 。。。












・・・ぽち隊長、引退はまだまだのようですよ(笑)。


ぽち隊長撮影
ここまでほとんど休憩をとらず、食べ物を口に入れずに登ってきたせいで、ぽち隊長までシャリバテになってしまった。こういうときは持久力に勝る女性の方が強いようだ(これまでの経験からもそう思う)。ま、私にはケモノ足もありますしね(冷汗;;

すでに尾根は広くなだらかになっているのに、なかなか山頂にたどり着かない。

東側に、こんな広場があった。今日は予報では晴れるはずだったのに、寒気が強いのか、標高が上がると太陽が雲に隠れ、細かい雪が降ってきた。

そしてまた林道に出合う。

登り、まだ続きます(笑)。

やがて向山南側の小さなコブが左手に見え、山頂が近いことがわかる。そして・・・、

もうすぐ山頂、というとき、右手の畳ガ平(たたみがなる)方面からやってくる人影が見えた。さて誰でしょう?

夫でしたー!

標高差700mの登りを嫌い、「オレは深入山側から行くから向山で会おう」と言ったヒト。ぽち隊長とは無線で交信をしながら登っていた。しかし考えてみると、標高差700mを3人で交代しながらラッセルするのと、標高差250mとは言え1人でラッセルし続けるのと、あまりきつさは違わないような気も・・・(笑)。

因みに夫のとった登路は、深入山南登山口に入る車道入口に車を停め、すぐ南側の民家脇からラッセル開始。蔵座山(最早山)に直登する尾根を登路に選ぶも、途中で4〜5回林道に阻まれ、そのたびに急な法面を避けて左右に登れそうな斜面を探し、予想以上に時間がかかって蔵座山に到着。そこからコンパスを向山に振り、鞍部の畳ガ平を経て向山へ・・・、というもの。やれやれ、お疲れさまです(笑)。

ともあれ、計画通り向山山頂で全員揃った。

風を避けて山頂から少し下がったところでランチ。ひたすらお腹に食べ物を入れる人々・・・。「なにか食べてから寝れば、体内で熱に変わるので冬山でも凍死することはない」という加藤文太郎の持論などを思い出しつつ・・・。(←飛躍しすぎか?)

ランチ後、少し日差しが出てきた。

向山から畳ガ平を経て蔵座山までは、だだっ広い雪原が最高に気持ちがいい。

夫のラッセル跡を利用して、難なく蔵座山に到着。

蔵座山から、ひとかたまりの杉林を抜けると、林道に下りる。(写真は林道を横切っているところ。)この先は地形を読みづらい。コンパスを頼りに進む。

しっかりした尾根地形になってくると、このルートの白眉、ブナの高木が林立するエリアを通る。

中でもひときわ大きなブナ。

ブナ林が終わると、南側に雪庇が張り出す痩せ尾根となる。登り返して小ピークを越え、さらに緩やかに下る(写真)。

すると尾根が分岐する地点に来た。コンパスは右の尾根を指している。

それで左の尾根は支尾根なのだと思い込み、右の急な尾根を下って行った。

しかし、支尾根ならやがて視界から消えるはずの左の尾根が、どんどん高く、存在感を増していく。それを見て尾根を乗り間違えたことに気づき、下ったばかりの急な尾根を15分かけて登り返した。

分岐に戻ってもう一度コンパスを見ると、ぽち隊長のコンパスも私のコンパスも、さっきと変わらず自信ありげに「こっちです!」と右の尾根を指している。コンパスが嘘をついているわけではない。

そこで改めて地図を見ると、この地点の先で主尾根の向きがほんの少しだけ変化し、その後また元に戻っていることに気づく。それを見逃して蔵座山からいきなりカナクラ峠にコンパスを振っていたために間違えたのだとわかった。充分な視界があれば左側の樹林ごしに深入山が見え隠れするから間違えようもないのだけれど(実際前回は間違えていない)、今日のようなもやっとした視界では、最初にコンパスを振る時点でよほどよく地形図を観察するか、尾根の分岐に来たら必ずちゃんと立ち止まって確認するかしなくてはいけなかった。

「まだまだ読図が甘いなぁ」と、謙虚なぽち隊長。いやまったくです。
ただ、こういう経験を重ねていかなくては読図能力は向上しない。右の尾根を下りきらないうちに間違いに気づいたのも、これまで地形図を見ながら山行を重ねてきたからだ。雪の山に入るなら読図は必須。これでまた一歩、自立した正しい登山者に近づきましたよ。

尾根の分岐で短い休憩。今日のおやつはパティシエールグレイシャー製酒かすパウンドケーキ♪

・・・だったのに、ゆっくり味わう間もなく下山のエネルギーとしてお腹の中に消えていった(哀;;

正しい尾根に戻り、カナクラ峠を目指す。

カナクラ峠に到着。写真の左側が深入山方面。

ここからは、本当なら谷筋を避けて犬ガ谷山に登り返し、尾根を下った方がいいが、1日中歩き続けて目の前の急坂を登る気力がない(ぽち隊長以外には)。それで谷を下る。下りきるまでに2〜3箇所、左右にとても急な斜面がある。雪崩を警戒してこわごわ見上げつつ、下っていった。

谷筋のトラバース。歩きやすいところを探して、右岸から左岸に渡り(写真)、そしてまた左岸から右岸に渡り返す。うまくスノーブリッジになっているところを見極め、踏み抜かないように慎重に・・・。

前回下った犬ガ谷山からの尾根先端を過ぎると、沢に当たる。R191に戻るには、この流れをどこかで渡らなくてはならない。

R191に出た。除雪でできた雪壁の上を、スキー場から帰る車に笑顔で手を振りながら歩いていく。突然現れた変なヤツらに、車中のみなさん、もの珍しそうにこちらを見ていました。手を振り返してくれた人の良さそうなおにいさん、ありがとー(笑)。

雪壁の上を歩くこと約20分、夫が蔵座山に登ったトレースを左側に過ぎ、車道を渡って駐車場所に到着。ちょうど午後5時。

この後、三段峡に戻ってぽち号を回収。R191の谷を通りながら、「この上の尾根を歩いたんだなー」と思うと、その踏破距離に改めて達成感を覚える。昨年の右谷山に次いでハードな冬期散歩だった。今日のルートは誰でも歩けるところではないし、誰とでも歩けるところでもない。ルート提案者のぽち隊長も満足できる散歩だったようです。犬ガ谷山には未練がありそうでしたが(笑)。

最後にひまわりのお湯で温まる。登り5時間、縦走2時間、下り1時間。100%ラッセルの1日は、どうやら無事に暮れていった。

このページのハスキーのイラストはこちらのサイトからお借りしました。


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