国境の山々 偵察編
(アラブ首長国連邦 ドバイ近郊)
2002年11月15日


ドバイでの住居は、窓の外が一面のアラビア湾(ペルシャ湾)。それはまあリゾート地みたいで悪くはないけど、もともと山育ちの私は、1ヶ月も暮らしているうちに起伏のない地形が物足りなくなってきた。「あー、山が見たい〜!!」と思っていたちょうどその頃、夫が車でオマーンへ出張に行き、帰って来るなり「国境には山があるで〜」と言う。「あー!それ本で読んだ。ハッタのあたりでしょ。行く行く!連れてって〜!!」 というわけで、まずは11月中旬、日帰りで偵察に行くことになった。


素晴らしい曲線を描く砂漠


高速道路の先に、突如現れる山エミレーツ道路44号線(E-44)に乗ってドバイを一歩出ると、そこはすでに砂漠。砂漠と言っても最初はぼてぼてと植物の固まりが生えているのが、20分も走っていると次第に砂漠らしい砂漠になっていく。「わ〜、砂漠だ〜、すごいねー」と感動しつつ走っているうちに、向こうの地面に突起が見えてきた。「あれは・・・、山?」 「見えてきたじゃろ〜。突然あるんだよな」と夫。

【ラウダ山(奥)】


このあたりはオマーン領がUAEに食い込んでいるところで、道路は看板ひとつでオマーン領に入っていく。砂漠から見えたその突起(ラウダ山)を左手にやり過ごし、再びUAE領に入ると、行く手にはラウダ山よりも更に高い山々が見えてくる。山脈と言ってもいいような規模と高さ。「あー、こういう眺めって久しぶり。やっぱりいいわ〜。」

道の両側には、素焼きの壺だのカーペットだのを売っている素朴な土産物屋が並ぶ。中にはUAEの首長(大統領)シェイク・ザイードのお姿をでかでかとデザインしたカーペットまで。「誰が買うんかね・・」 「降りて見てみるか」 「いや、いい(←きっぱり!)」とかなんとか言っているうちに、車は右折して小さなコミュニティを抜け、山脈を左手に見て走り始めた。

「頂上に何か建ってるあれがハッタ山よ、きっと。写真撮ろう!」と道ばたに車を停め、三脚をセットしていると、1台の車がクラクションを鳴らして通り過ぎ、Uターンして戻ってきた。「う、まずい。さっきサンドイッチ食べちゃったもんな〜。ラマダン中なのに食べてるの、見られたかな、ちゃんと隠れて食べたのにな・・・」と不安に思っていると、車から降りてきたのは地元のあんちゃん達3人。「なにやってるんすか。なんか、手伝いましょうか」なんて言っている。


ハッタ周辺の山々


「いやいや、大丈夫。なんとかなるから」と、三脚をセットし終え、強い紫外線を警戒してレンズにフィルターをつけている間も、あんちゃん達は立ち去る気配もなく、もの珍しそうにじ〜っと私たちを眺めている。そのうち私に向かって"You is nice!"と言ってきた。 は? 何ですって? それはもしかして"You are nice"(「オバサン、いかすね!」)のつもり? あらー、そう? 私ってナイス? いいの、いいの、文法の間違いなんて気にしなくていいのよ、おっほっほ。


地元のあんちゃん達とナイスと言われて舞い上がってしまった私。しかしよく考えてみれば、濃いめのお顔の彼らにとって、単にのっぺりしたモンゴロイドが珍しかっただけかも知れない。ともあれ、記念に写真を撮って、カワイイあんちゃん達と別れ、再びE-44に戻ってハッタへと向かった。

【写真ではわかりませんが、かなりの暑さです。】


ドバイから車で1時間ちょっとのハッタには、ハッタフォートホテルというリゾートホテルがある。芝生に覆われた丘の斜面にコテージ形式の部屋が連なり、部屋の前には花々が咲き乱れる。ヒョロヒョロヒョロと、不思議な鳥の声もする。そして何より、風景の一部にちゃ〜んと山がある。お茶を飲んで山を眺めているうちに、自分がものすごくこういう眺めを欲していたことがわかった。

トコトコ歩いているラクダ「今度泊まりに来ようね。それで回りを歩いてみよう。」 そう決めてドバイへの帰途につき、ラウダ山の麓まで来たとき、車窓から動くものが見えた。「あ!ラクダよ、ラクダ。すっご〜い。ほんとにいるんだー!」



ラクダを見て本来の目的を忘れそうになってしまったけど、実はまだラウダ山の偵察が残っていたのだった。登山口(?)は山の裏側にあるらしいので、山裾を回って車で裏側に入ってみた。採石場を右手に、わずかなタイヤ跡をたどって進み、「これ以上は四駆じゃないと行かれんねー」と話していると、後ろからRV車がぶぶぶ〜っとやって来て私たちの前で止まった。運転席からは、またまた地元民のおじいさんが顔を出して何やら話しかけてくる。でも、よーっく耳をすましても何を言っているのか全然わからない。「???」となっていると、夫がいきなり「サラーム」と言って応対し始めた。どうやらアラビア語だったらしい。見ていると、最初は硬い表情だったおじいさんが、だんだん笑顔になってきた。やれやれ。 錆び付いているのでは、と秘かに心配していた夫のアラビア語がこんなところで役に立つとは!

結局、山に登りたかったら四駆を手に入れる必要がある、という結論に至って、ドバイへと帰る。砂漠を眺め、山を眺め、ラクダを眺め、眺めてばかりの偵察編は終わり。楽しかったけど、やはり体を動かさないともの足りない。今度ハッタに行ったら、せめてジョギングコースぐらいは歩いてみよう。


「ハッタ・フォート・ホテル ジョギングコース」へ

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